2005年 10月 02日
イリーナ |
「イリーナ」
「アー、キヨシ」
私は優しく肩を抱いて口づけした
やせてしまった細い肩
みかんの花のような香りがした
「朝から、ずーっと、待っていたのですよ。
少し無理して起き上がってお化粧もしたのですよ」
傍の看護婦がささやくように説明してくれた。
窓からは暑い夏の日差しが差し込んでいた
じっと見つめる碧い瞳
三つ組みにした金髪
まるで学生時代と変わらないようだ
私は昔、昔のひまわり畑の写真を取り出した
通りがかった人に撮ってもらった一枚だ
私と歯にかむように並んだイリーナ
「よく持っていたのねー」
「ずっといつも持っているのさ」
後ろの池で水浴びをしてふざけあって
斜面いっぱいに咲いたひまわり畑で追いかけっこをした
バスに乗って横の人にお金を回しておつりをもらった日
マロージュネ(アイス・クリーム)を食べながら歩いた通り
「あなたは何になるの」
「学者さ」
「何を研究するの」
「数学。イリーナはなんになりたいの」
「英語の先生よ」
なんて遠い日のことが思い出されるのだろう
力ないイリーナの手が写真をなぞっている
ちっちゃなダーチャでの日々
ただ横にいるだけで幸せだった
ある夜、イリーナが
「帰ってくるかなー」
と聞いたとき
「わからないよ。待ってなくていいよ。」
過ぎ去った年月を思った
不思議な糸で
やっと探し当てたひまわり畑の上の白い病院
「あまり時間はありませんよ。興奮させないでください。」
と会う前にドクターは言った
そこでベッドに横たわった彼女がいた
「また行きたいわ」
「どこに」
「ひまわり畑」
静かな午後のときが流れる
イリーナは目をつぶった
「また、明日来てください。今は眠っています。」
看護婦が静かに促した
英語の先生にはならなかったそうで
インツーリストの仕事をしていたとドクターが説明した
どんな生活をしていたのだろうか
どうしてこの村に戻ってきたのか
私を待っていたのだろうか
翌日も暑かった
ひまわり畑の傍を汗をかきながら病院に行った
イリーナはベッドの上で白いシーツをかけられていた
シベリアの夏は短い
ただ涙が流れてきた
「アー、キヨシ」
私は優しく肩を抱いて口づけした
やせてしまった細い肩
みかんの花のような香りがした
「朝から、ずーっと、待っていたのですよ。
少し無理して起き上がってお化粧もしたのですよ」
傍の看護婦がささやくように説明してくれた。
窓からは暑い夏の日差しが差し込んでいた
じっと見つめる碧い瞳
三つ組みにした金髪
まるで学生時代と変わらないようだ
私は昔、昔のひまわり畑の写真を取り出した
通りがかった人に撮ってもらった一枚だ
私と歯にかむように並んだイリーナ
「よく持っていたのねー」
「ずっといつも持っているのさ」
後ろの池で水浴びをしてふざけあって
斜面いっぱいに咲いたひまわり畑で追いかけっこをした
バスに乗って横の人にお金を回しておつりをもらった日
マロージュネ(アイス・クリーム)を食べながら歩いた通り
「あなたは何になるの」
「学者さ」
「何を研究するの」
「数学。イリーナはなんになりたいの」
「英語の先生よ」
なんて遠い日のことが思い出されるのだろう
力ないイリーナの手が写真をなぞっている
ちっちゃなダーチャでの日々
ただ横にいるだけで幸せだった
ある夜、イリーナが
「帰ってくるかなー」
と聞いたとき
「わからないよ。待ってなくていいよ。」
過ぎ去った年月を思った
不思議な糸で
やっと探し当てたひまわり畑の上の白い病院
「あまり時間はありませんよ。興奮させないでください。」
と会う前にドクターは言った
そこでベッドに横たわった彼女がいた
「また行きたいわ」
「どこに」
「ひまわり畑」
静かな午後のときが流れる
イリーナは目をつぶった
「また、明日来てください。今は眠っています。」
看護婦が静かに促した
英語の先生にはならなかったそうで
インツーリストの仕事をしていたとドクターが説明した
どんな生活をしていたのだろうか
どうしてこの村に戻ってきたのか
私を待っていたのだろうか
翌日も暑かった
ひまわり畑の傍を汗をかきながら病院に行った
イリーナはベッドの上で白いシーツをかけられていた
シベリアの夏は短い
ただ涙が流れてきた
by KawazuKiyoshi
| 2005-10-02 21:18
|
Trackback
|
Comments(0)